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ワクチンの有効性とリスクを理解し、接種するかどうかは自分で判断する

昨年12月2日に改正予防接種法が成立し、新型コロナウイルスワクチンを臨時接種特例として接種することが決まりました。国は、医療従事者、高齢者、基礎疾患のある人などを対象に、2月下旬にもワクチン接種をスタートさせ、その後5~6月には、16歳以上の一般国民へと対象を広げていく予定といわれています。

そもそもワクチンは、感染症にかかっていない健康な人や基礎疾患のある人に接種するものなので、高い安全性が求められます。ワクチンの有効性と安全性を正しく理解したうえで、接種するかどうかは自分で判断する必要があります。

 

◆欧米では接種が始まっている

 

世界では現在、多くのワクチンの開発が進められています。

海外では、ファイザーやモデルナによるmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン、アストラゼネカなどのウイルスベクターワクチンの開発が先行しています。ファイザーのmRNAワクチンは、すでに英国、米国で接種が行われ、モデルナのmRNAワクチンも米国で接種が始まっています。

日本は、この3社との間でワクチン供給の契約や基本合意を結んでおり、ファイザーからは昨年12月18日に承認申請が行われました。日本国内でも、さまざまな方法によるワクチン開発が進んでおり、臨床試験がスタートしたものもあります。

 

 

◆ワクチンによって長所と短所がある

 

 ワクチンは、種類によって働く仕組みが異なり、長所と短所があります。

 ファイザーやモデルナのmRNAワクチンは、mRNAという遺伝子に働きかける物質を使って新型コロナのタンパク質を人の細胞内に作り、本物のウイルスが侵入してくると、免疫が働いて素早く排除するという仕組みです。ウイルスを使わないので安全で、簡単に素早くワクチンを製造できるという長所があります。

 一方で、mRNAワクチンは非常に分解されやすい物質でできており、温度変化に弱いという欠点があります。輸送や保管には、マイナス70℃の環境を保つ必要があり、そのための設備を確保しなければなりません。

 アストラゼネカのウイルスベクターワクチンは、ベクター(運び屋)として別のウイルスに新型コロナの遺伝子を組み込んで人体に投与するもので、人の細胞内でタンパク質が合成されて免疫反応が起こります。

 すでにエボラ出血熱のワクチンとして使用実績があり、素早く製造でき、既存の生産設備や物流システムを活用できるという利点があります。他方、定期接種に向かない、安全性に懸念があるといった短所も指摘されています。

 

◆ワクチンの有効性の評価はこれから

 一言でワクチンの有効性といっても、評価方法には次の3つがあります。

①免疫原性:被接種者の血清中の抗体のレベル(抗体価)が感染や発症を防ぐレベルに達した人の割合で評価する

②臨床試験での有効率:接種群と対照群(非接種群)との発症率の差を比較する

③実社会での有効率:多くの接種対象者にワクチンが普及した後、目的の感染症が実際にどのくらい減少したかを評価する

 

まだ接種が始まったばかりなので、実社会での有効率の評価はこれからですが、一部のワクチンでは、免疫原性が確認され、臨床試験での有効率が報告されています。ファイザーとモデルナのmRNAワクチンでは、臨床試験で90%以上という高い有効率が確認されました。

ちなみに、90%の有効率というのは、接種した人の90%はかからないが、10%はかかるという意味ではありません。接種群と非接種群の発症率を比較して、非接種群の発症率より接種群の発症率のほうが90%少なかったという意味です。

 

アストラゼネカのウイルスベクターワクチンは、英国とブラジルで実施した試験で70.4%の有効率を確認しています。

 

これらの臨床試験では、いずれも年齢層ごとの有効性が評価され、75歳未満では優位な有効性が見られていますが、75歳以上では対象者数が不十分なため有効性が評価されていません。また、被接種者の人種構成は白色人種が大半で、アジア系の割合は数%にとどまっています。

高年齢者での有効性の評価、人種による違い、基礎疾患ごとの有効性の評価など、今後の課題とされています。

さらに、ワクチンによってどのくらいの期間免疫が維持できるのか、免疫の持続性についての評価もまだできていません。この点についても注意が必要です。

 

 

◆ワクチンには副反応もある

 

 ワクチンは、有効かどうかだけでなく、安全かどうか、副反応の種類や頻度、程度も重要な評価材料になります。接種後に、健康上不利益になるようなことが見られないかどうか、接種群と非接種群の頻度を比較して、接種群で優位に高い頻度で見られた場合に、ワクチンによる副反応の可能性が高くなるのです。

 副反応には、接種した部位の疼痛や腫脹のほか、発熱や倦怠感などの全身症状があります。ときには、接種直後のアナフィラキシーショックなどの重篤な副反応も発生します。先行して医療従事者を対象に接種が始まった英国や米国では、アナフィラキシーショックの発生例が複数報告されています。

 mRNAワクチンは、分解されやすく長期間細胞内に残ることはなく、染色体に組み込まれることはないので、比較的安全性は高いと予測されています。それでも、今後繰り返し投与される場合の安全性、長期的な安全性の観察は重要です。

 臨床試験段階では、mRNAワクチンの疼痛の頻度が70~80%台と高く、ファイザーのワクチンでは日常生活に支障が出る中等度以上の疼痛が報告されています。これは、インフルエンザワクチン接種時の10~22%に比べてはるかに高い数値です。

 発熱も、頻度が比較的高いとされています。とくに高齢者よりも若年層で頻度が高い傾向があります。

 

 副反応の評価に関しても、有効性の評価と同様に、いくつかの課題が指摘されています。

 第一に、臨床試験での被接種者数が数千人から数万人台と限られているため、数万人に1人というごくまれな健康被害について見逃されている恐れがあるということです。今後、接種が進むにつれ、新たな副反応が明らかになる可能性もあります。

 第二に、被接種者が白色人種に偏り、アジア系の割合が少ないため、人種による副反応の頻度の違いなどがまだ確認されていないことです。

 さらに、75歳以上の高齢者や基礎疾患がある人への接種の安全性も、十分には確認されていません。

 これらは、長期的な安全性の確認とともに、十分な検討が必要でしょう。

 

 

参考資料)COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)

一般社団法人 日本感染症学会 ワクチン委員会

https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/2012_covid_vaccine.pdf