1万人を対象に抗体検査実施へ
5月22日、厚生労働省は、6月から東京都、大阪府、宮城県で、20歳以上の住民約1万人を対象に抗体検査を実施すると発表しました。感染がどれだけ広がっているのかを把握するのが目的です。
そもそも、新型コロナウイルス感染症の検査には、大きく分けてPCR検査、抗原検査、抗体検査の3つがあります。
PCR検査と抗原検査は、「いま感染しているかどうかを判定する」検査です。これに対して、抗体検査は「過去に感染したかどうかを判定する」ものです。
PCR検査は、ノドを拭ったり痰を採取したりして、その中のウイルスの遺伝子の有無を調べます。ウイルスの遺伝子が少なくても検出できるため、検査結果の信頼度は高いものの、結果がわかるまでに6時間ほどかかり、検査を行う医療従事者が飛沫感染する恐れもあるという欠点があります。
その点では、抗原検査は、インフルエンザの検査と同じように、簡単に検体を採取することができ、約30分と短時間で結果が判明するという利点があります。ただし、検査の感度が低く、感染していても陰性と出てしまうこともあるため、抗原検査で陰性と出た場合は、念のためPCR検査を併用することになっています。
この2つに対して、抗体検査では、血液を採取して抗体があるかどうかを調べることによって、過去の感染の有無がわかります。ウイルスに感染すると、免疫反応が起きて体内に抗体(タンパク質)がつくられます。検査で抗体が見つかれば、過去に感染したことがわかるのです。採血後15分程度で結果が出ますが、抗体がつくられるまでに2~3週間かかるため、PCR検査や抗原検査とは違って、診断には向きません。あくまでも、感染歴を確認するための検査です。
抗体検査では、「偽陽性」といって、実際には感染していないのに陽性と出てしまうという欠点が指摘されています。東京都の調査では、新型コロナウイルス感染症が発生していない時期(2019年1~3月)の献血からも陽性が出たということです。
さらに、WHO(世界保健機関)は、「抗体ができていたとしても、再感染しないという証拠はまだない」と発表しています。はしか(麻疹)とは違って、一度感染して発症すれば二度とかからないという根拠はないというのです。抗体があっても、免疫が次第に減っていき、なくなってしまう可能性もあります。
とはいえ、近く予定されている抗体検査は、国内に抗体を持っている人がどれだけいるのか、感染の広がりを知るための一つの目安とはなるでしょう。それを、今後の感染拡大防止策にどう活かすのかが課題です。
一般に感染症に関しては、「集団免疫」といって、人口の約70%が免疫を持てば感染は収束に向かうと言われます。新型コロナウイルスの集団免疫がいつ獲得されるのか、そもそも獲得できるのか、このウイルスに関しては、まだわからないことだらけです。
今後予想される感染の第二波、第三波をどうやって乗り越えるか、予防、検査、治療など、多方面で模索が続いています。