フェイスシールドは感染予防には不十分
新型コロナウイルスの感染対策として、フェイスシールドやマウスシールドを着用する人が増えてきました。マスクに比べて息苦しさや暑苦しさがなく、口元も見えるという利点があります。そのため、口の動きを見せたい手話通訳者や語学講師、保育士などを中心に利用が広がり、最近ではスタイリッシュであるという側面からか、一般の人でも着用している人が多くなっているようです。
ところが、肝心の感染防止効果は不十分という研究結果が公表され、対策の見直しが必要になっています。
9月1日に伝えられた米国アトランティック大学の研究チームによる実験では、フェイスシールドは、咳の初期の飛沫拡散は一部遮断したものの、フェイスシールドの外に出た飛沫は周辺に広範囲に広がったといいます。そのため、新型コロナウイルスのエアロゾルの拡散を防ぐことはできず、マスクほどの効果はないとしています。
日本でも、フェイスシールドの有効性を調べる研究が行われています。
理化学研究所や神戸大学などの研究チームは、不織布マスクを着用した場合と、フェイスシールドをつけた場合で、飛沫の広がり具合を比較しました。
不織布マスクでは、大きな飛沫(50マイクロメートル以上)の拡散はほぼ防ぐことができ、エアロゾル(5マイクロメートル以下)の漏れは3割程度にとどまったそうです。
一方、フェイスシールドでは、大きな飛沫は半分が漏れ、エアロゾルは100%近く漏れてしまったといいます。
この結果から、飛沫を拡散させないという点では、明らかに不織布マスクのほうが有効であり、フェイスシールドでは不十分だといえます。
フェイスシールドをめぐっては、新型コロナウイルス感染症対策分科会会長の尾身茂氏も、マスクへの補助的な役割を果たすものだといっています。ほかの人の飛沫を吸い込むのを防いだり、自分の飛沫の拡散を防いだりする効果は、マスクほどは期待できないというのです。
フェイスシールドやマウスシールドは、自分の飛沫が相手の顔に付着するのを防ぐ効果は多少あっても、飛沫の拡散を防ぐ効果はあまり期待できそうもありません。あくまでも、マスクをつけたうえで着用する補助的な防御手段と考えたほうがよさそうです。
新型コロナウイルスの感染対策という観点からは、屋内など人が密接する場所でのフェイスシールドやマウスシールドの単独の使用は控えるのが賢明でしょう。
※健康管理メモ
◆マスクのつけ方
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00094.html
厚労省HP