期待が高まる有効で安全なワクチン開発
ウイルス感染症の予防には、ワクチンの開発が不可欠です。WHO(世界保健機関)によると、世界では現在、新型コロナウイルス感染症対策として166種類のワクチン開発が進み、そのうち24種類は人に投与する治験が行われているといいます。パンデミック(世界的感染爆発)の状態にある新型コロナウイルス感染症に打ち勝つため、世界中の研究機関が予防のためのワクチン開発にしのぎを削っているのです。
この開発競争で一歩先行しているのが、英国オックスフォード大学と製薬大手のアストラゼネカの研究チームによるワクチン開発です。「人に投与する初期の臨床試験(治験)で安全性と強い免疫反応を確認した」と医学誌『ランセット』に発表しました。
発表によると、新型コロナウイルスにかかったことのない健康な18~55歳の1077人に開発中のワクチンを投与したところ、28日後には9割の人の体内で抗体がつくられ、ウイルスに感染した細胞を攻撃するT細胞の免疫反応は、投与14日後をピークに著しく高まることが確認されたそうです。
一方、7割の人が疲労感や頭痛を訴えたものの、重大な副作用は見られなかったといいます。
治験は、英国やブラジルなどでも進んでおり、日本では8月にも治験をする方向で調整しています。
同研究チームは、早ければ今年9月にもワクチンの供給を始めるとの見通しを示しており、日本を含む各国が自国分の確保に乗り出すなど、獲得競争が始まっています。
ワクチンを安定的に確保するためには、国内でワクチンが開発・製造されるのが最も有利です。日本国内でもいくつかの研究チームがワクチン開発に取り組んでいますが、その中で初めて国内で治験を開始したのは、大阪大学発バイオベンチャーのアンジェスです。2021年7月31日までの予定で、大阪大学と共同開発したDNAワクチンを健康な成人を対象に接種し、安全性と有効性を評価しています。
ワクチンによる発症予防効果は、感染症によって異なります。例えば、麻疹(はしか)のように90%以上の予防効果があり、免疫を獲得すれば二度とかからないものもあります。季節性インフルエンザでは、65歳以上の健康な人で予防効果は45%程度、ワクチンを接種しても感染してしまうこともあります。ただし、重症化を抑えられるので、ワクチン接種の有効性はあります。
開発が進む新型コロナウイルス感染症のワクチンに、どれほどの発症予防効果があるのか? 一度獲得した免疫はどのくらいの期間持続するのか? そして深刻な副作用はないのか?
有効で安全なワクチンの開発・実用化に期待が高まります。
☆ワクチン関連の情報☆
~新型コロナウイルス以外の感染症対策も重要です~
◆遅らせないで!子どもの予防接種と乳幼児健診
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11592.html
◆高齢者のワクチン 肺炎球菌感染症(高齢者)
◆厚生労働省 感染症情報
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/index.html