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食物繊維を多くとると死亡リスクが低くなる

 食物繊維といえば、古くから便秘解消に一役買うありがたい成分として知られています。近年は、肥満と深く関わる生活習慣病やがんの予防にも効果があることが明らかにされ、食物繊維を意識した食生活を心がける人も少なくありません。

こうした食物繊維の持つ実力をさらに確かなものとして裏づけるのが、このほど国立がん研究センターの研究チームによって発表された調査結果です。「食物繊維を多くとる人は、少ない人に比べて死亡リスクがおよそ20%低い」ことが明らかになったのです。

 

 同研究チームは、45~74歳の日本人男女約9万人を対象に、およそ17年間にわたって食物繊維摂取量とその後の死亡リスクとの関連について追跡調査を行いました。どの食品をどのくらいの頻度で食べているかなどを答えてもらうアンケート結果を用いて1日の食物繊維摂取量を計算、5つのグループに分けて、その後の死亡との関連を調べるというものです。

 その結果、食物繊維摂取量の最も多いグループと最も少ないグループでは摂取量に10gの差があり、最も多いグループの男性の死亡リスクは摂取量の少ないグループに比べて23%低く、女性は18%低いことがわかったのです。

 

 さらに注目されるのは、男女ともに、食物繊維摂取量が多いほど循環器疾患による死亡のリスクが低く、男性では、食物繊維摂取量が多いほどがんによる死亡リスクが低いということです。

 食物繊維の摂取源ごとの調査では、豆類、野菜類、果物類からの摂取量が多い人ほど死亡リスクが低いということもわかりました。

 

 これまで欧米では、食物繊維の摂取量と死亡リスクとの関連について調べられており、摂取量が多いほど死亡リスクが低いという結果が報告されていました。しかし、日本をはじめアジアではこうした報告はなく、このほど日本人についても同様の調査結果が得られたのは価値のあることです。

 

 欧米の結果と異なるのは、日本人では、穀類からの食物繊維摂取量と死亡リスクとの関連が明らかにならなかったことです。これは、日本人の口にする穀類がおもに、食物繊維含有量の少ない精白米であることが理由として考えられています。

 

 4月からの2020年度、厚生労働省による『日本人の食事摂取基準』が改定され、食物繊維摂取量についても目標量が見直されます。指標設定の基本にあるのは、食物繊維の摂取不足による生活習慣病の発症や重症化を予防するという考え方です。

 摂取目標は、18歳以上の成人男性で1日20~21g以上、女性は17~18g以上ですが、これまでの国民健康・栄養調査によると、実際の摂取量は男女ともに11~16gと、目標を大きく下回っています。

 今後、食物繊維の摂取量を増やすには、豆類、野菜類、果物類からの食物繊維摂取量をさらに増やすか、食物繊維含有量の多い穀類、例えば玄米、全粒粉のパン、シリアルなどの摂取量を増やすといった方法が考えられます。そうすることが、生活習慣病などによる死亡リスクを低下させることにつながるのです。

*国立がん研究センターの研究チームによる研究成果は、American Journal of Clinical Nutritionに掲載されています。

※食物繊維について詳しく知りたい方は、下記の情報を参考にしてください

■厚労省 eヘルスネット 

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html